高校化学に触れる機会があり、少しずつ再勉強をしています。
その中で感じる、分野ごとの学習の方針について、備忘録的に描いていこうかなと思います。
執筆時の個人的な見解がメインで、また、具体的な内容の解説ではありません。
学習の際は信頼できる指導者の下で学習するのが最良だと思います。(特に時間が限られている受験生などはなおさら…)
はじめに
化学、というよりは物化生地すべてを含む理科全般(自然科学)にいえることですが、どんなに理屈や理由を求めても、最終的には「そういうもの」と無条件に飲み込まなければならない事実に突き当たります。
「定義」など人間が定めたものは分かりやすいですが、そうでなくとも「物質の色」や「閉殻・オクテットは安定」といった物質や原子の性質に関するものは、「そういうもの」と飲み込まなければならないことが多い気がします。
もちろん、高校理科では「そういうもの」だけど、より専門的に学習を進めれば理屈が通るようになるものもあります(有機化学などは典型とされます)が、いつかは「そういうもの」と飲み込まなければならない事実に突き当たります。
これはそもそもが、数学など人間がその構成要素のすべてを設定する学問体系と違って、理科(自然科学)という学問が、はじめからそこにある「世界」を人間なりに観察・解析していく営みであるからだと思っています。
人間がどう理屈をこねようと、世界が「そう」である以上、「そういうもの」と飲み込まなければならない、ということですね。
数学は、“公理”を定め、そこを出発点として論理的に間違いがないよう論を展開していきます。その前提を覆さない以上、数学的な証明は未来永劫不変ですし、人間が新たに「ルールの成り立つ世界」を作っているといってもよいかもしれません(神様のようですね)。
理科(自然科学)は、数学という“人間的な道具”を用いて「世界」の理解に努めますが、根本的には人間がいようがいまいが変わらない「世界」の姿を研究対象としています。
だからこそ、人間側がどんなに「○○に違いない!」といっても、世界側が「□□です」といえば正解は「□□」なのです。実験事実と合致しなければ、どんなに凄そうな理論でも机上の空論です。
「絶対に納得できる理屈があるはずだ!」と求めたくもなりますが、どこかで「そういうもの」と飲み込んでやりましょう。特に高校化学ではその傾向が顕著なので、肩肘張らずに覚えるべきものは「そういうもの」と覚えて、学習を進めていきましょう。
大学以降の学習で、「あれはそういうことだったのか!」と感動するのも、学習を続ける人たちの特権だと思います。
現在の人類たちが叡智を結集して、「世界」を人間が理解できるように解読している。その営みは素晴らしいですし、一方で、新たな実験事実が積み重なっていけば、あらゆる理論は将来的に否定される可能性をはらんでいます(反証可能性)。
終わりなき「世界」への探究、ロマンを感じますね。
化学全体の概観
高校化学は、
- 理論化学
- 無機化学
- 有機化学
の3つに大きく分けられます。
これらの単元はそれぞれ独立しているわけではなく、特に「理論化学」は「無機化学」「有機化学」それぞれを理解するための基盤となります。
また、化学基礎では「理論化学」 の一部を扱います。“基礎”の名の通り、高校化学すべての土台になるため、軽視せずにしっかり理解しておきたいです。
可能であるならば、まずは早めに教科書を一周して「高校化学の全体像」をざっくり眺められるようになると、学習の見通しが立ちやすくなると思います。それがモチベーションにも繋がりますしね。
化学の計算について
高校化学は物理ほど数学数学しておらず、現象理解に対して数学的な思考や技能を要求されることも少ないです。四則演算的な「量計算」がせいぜいです。
とはいえ化学で行われる計算は、数学的な「純粋な“数”の計算」ではなく、「数値+単位で表される“物理量”の計算」です。体積[L]も質量[kg]も圧力[Pa]も電気量[C]もエネルギー[J]も、すべて単位を持っています。
そのため、化学の計算では「単位を意識した」計算を行うことが重要で、その単位計算の中心に位置するのが有名な「モル(mol)」です。
化学の計算は、「与えられた量」と「求めたい量」を「molを中心に変換していく」過程であり、ゆえに「モル(mol)」への理解と練習は大切になってきます。大変かもしれませんが、頑張っていきたいですね。
数値と同様に単位も約分ができることや、それぞれの量についている単位の意味が理解できてくると、雑多に見える化学の計算の多くが、「単位の変換」という土俵に乗っている様子が見えてきます。
理論化学
大学以降では「物理化学」とも呼ばれる、その名の通り物理学と関連の深い単元です。
気体の状態方程式()や電気化学の分野など、高校物理でもおなじみの知識を用いる分野も多いですね。
「理論化学」には以下のような分野があります。 (分け方は一例です。複数分野にまたがる内容も多いです。)
- 化学の基礎 (原子と元素,周期表,化学反応式,物質量[mol])
- 構造の理論 (電子配置と結合,電気陰性度,結晶)
- 状態の理論 (物質の三態,状態変化,気体の法則,蒸気圧、溶液)
- 反応の理論 (熱化学,速度論,平衡論)
- 物質の反応 (酸塩基反応,酸化還元反応,沈殿生成反応,錯イオン形成反応など)
化学の基礎
いうまでもなく、化学を学習するための基礎となる部分です。
すべての前提となる重要な部分ですが、初めはざっくりとした理解で進んで、他の分野を学習してからもう一度眺めてみると、教科書にどのようなことが書かれているかを、より実感をもって理解を深めることができると思います。

構造の理論
化学は「電子の学問」であるといえます。
原子どうしが結合するのも、物質が反応する(=結合の組み換えが起こる)のも、そこには電子が関与しています。
電子についての理解が深まると、化学全体に対する理解が格段に深まります。
結晶格子の計算は、3次元的な立体構造を2次元の紙面上だけで表現するのに限界があります。3Dモデルを扱えるサイトなど有用なものも多いですが、現物のモデルを実際に触りながら考えるのが一番だと思います。
学校などで教材として現物モデルがあるのであれば、ぜひ使ってみてください。格段にイメージが掴みやすいはずです。
状態の理論
どの物質も、温度や圧力を変えることによって、固体・液体・気体の3つの状態いずれにも変化させることができる。
物質が“原子という粒”からできているということがわかっている現代的には、物質の状態は「粒の熱運動」と「粒間の引力」との関係で説明されます。
結局は粒子の集合状態を考えていくわけですが、その際に以下の3つの因子が影響します。
- 粒子の熱運動
- 粒子間の引力
- 外部からの圧力
このうち、粒子間の引力は物質に固有のものですが、粒子の熱運動(温度に比例)と外圧は人間が自由に設定できるため、温度と圧力を変化させたときに物質がどの状態をとるかを考えていくわけです(状態図)。
また、理想気体の状態方程式やボイル・シャルルの法則に代表される「気体の法則」ですが、「気体は粒子が集まったもの」であることを知っている現代的には、非常に素直にイメージできる(当たり前のことを言っている)ことを意識したいです。
気体法則を使う計算は、気体の法則が多くてややこしかったり、やややなどいくつもの物理量が登場したり、混合気体で複数の物質が登場したりするため、計算が煩雑になり苦手とする人が多い印象です。
は混合気体を含むすべての理想気体に対して成り立つので、究極的にはに代入して計算すればよいのですが、場合によってはもっと簡単に計算できることもあります。
そこで、以下の方針が参考になると思います。
① 粒子の動きが想像しやすよう、図を描いて情報整理&状況把握をする。
② 容器内の様子がわかったら、,,,などを求める。
・1つの状態(気体)のみで考えるなら
・2つの状態(気体)の比較で考えるならボイル・シャルルの法則
反応の理論
熱化学(化学熱力学)、反応速度論、化学平衡論を扱いますが、これらはかなり物理寄りの内容で、
- 熱化学 : その反応は「そもそも起こり得るのか?」 (変化の方向性と可能性)
- 速度論 : その反応は「どのように進むのか?」 (反応のしくみ・速さ・道筋)
- 平衡論 : その反応は「どこまで進むのか?」 (反応のゴール・反応量)
といった視点で、「化学反応それ自体」について考えていきます。
熱化学の分野ではエンタルピーやエントロピー(+ギブズの自由エネルギー)、速度論では活性化エネルギーや触媒、平衡論ではルシャトリエの原理(平衡移動の原理)や平衡定数が登場します。
これらの内容は、酸塩基反応や酸化還元反応などの化学反応、状態変化や溶解など、あらゆる「変化」を考える土台となります。
平衡定数は、理論的にはギブズの自由エネルギー(熱力学)から導出されます。
「平衡定数に達した状態」という平衡論のゴールは、「系の自由エネルギーが最小になった状態()」という熱化学のゴールと裏返しの関係(同じこと)といえます。
また、やが「その変化は間違いなく起こる」といっても、その変化に1万年かかるのであれば、私たち人間にとってはもはや“反応しない”も同然です。
現実的な反応速度で“反応を起こす”ためにはどうすればよいのか(触媒や加熱の有無はどうするか)、という速度論的な視点は、工業化学などでも大切になってきます。
物質の反応
「酸塩基反応」や「酸化還元反応」など、具体的な化学反応について学んでいきます。
反応ごとに膨大な化学反応式が登場しますが、そのすべてを覚えるのは不可能です。よしんば頑張って覚えたとしても、知らない物質や化学反応が登場してしまうと途端にお手上げになってしまいます。
大切なのは、それぞれの用語の定義や反応の原理を理解することです。
化学反応をつくるのも反応量の計算を行うのも、反応の原理をもとに反応を捉える、化学反応が起きる理由を正しく理解することができるかにかかっています。
無機化学
炭素Cの学問である「有機化学」に対して、「無機化学」はC以外のすべての元素を対象とした学問です。
ほぼすべての元素を考えることになるため、非常に雑多でごちゃごちゃした印象をもたれがちで、またどうしても暗記が多くなる単元なので、理解や暗記の土台となる考え方をもっておくのが大切です。
無機物質はほぼすべての元素が組み合わさってできるため、構成元素の違いが物質の性質に大きく影響します。
そのため、以下のように各元素の姿を確認しておくことが大切になります。
周期表をもとに、各元素を
・族と周期(アルカリ金属,アルカリ土類金属,ハロゲンなど)
・典型元素と遷移元素
・金属元素と非金属元素
・両性元素
などのグループとして捉え、各グループの性質や、グループ内での序列などを整理する。
また、ほぼすべての元素が登場することから、「塩素Clとフッ素Fを比べると…」といった元素間の比較や、「NH3からHNO3を合成する」といった1つの元素内での化学反応もよく行われます。
化学反応については、理論化学で扱った各反応のしくみが土台になります。無機化学では数多くの反応を扱いますが、そのほとんどが以下の基本反応で説明がつきます。
無機化学に登場する化学反応の分類
①酸塩基反応(中和反応)
②酸化還元反応
③沈殿生成反応
④錯イオン形成反応
⑤その他の反応
酸塩基反応は、ブレンステッド・ローリーの定義を採用することで統一的に考えることができます。特に高校化学では考えることが少ない定義ですが、興味があればぜひ学んでほしいと思います。
また、気体の製法や工業的製法なども無機化学でよく扱います。気体の性質など覚えなければならないものも多いですが、特に「実験室での製法」と「工業的な製法」の違いは意識しておくと良いと思います。
・“安く,速く,大量に,無駄なく効率的に”といった、実験室化学ではない「工業的な視点」をもつ
・「原料目的の生成物」の過程で、通常の方法では起こしにくい反応に対してどのような工夫をしているか
有機化学
有機化学は炭素Cの化学です。
118種類もある元素の中でただ一つCを主役とし、有機化合物をつくる他の元素もH,O,Nなどの少数のみです。そのため、さまざまな元素の違いや元素間の関係を整理する無機化学とはちがい、元素の違いで悩むことはあまりありません。
有機化合物はCを基本骨格とした物質ですが、実に数千万種以上の物質が知られており、無機化合物と比べても圧倒的な多様性を誇ります。
有機化合物がこれほどの多様性を誇るのは、炭素原子が「最高4つの原子と結合できる」「二重結合や三重結合をつくることができる」「いくつでもほぼ無限に結合をつなげていくことができる」といった性質をもつことに由来します。
すなわち、少数の元素で「いくつもの構造(形)をつくり出せる」ことが、有機化合物の特徴です。
有機化学は、化合物の構造(形)に注目する。
構造式や異性体を考えるのがわかりやすい例だと思います。
また、有機化合物の反応の仕組みは、高校化学ではあまり扱いません(丸暗記、とされることも多いです)。
有機電子論と呼ばれる、電子対や電子の動きを巻き矢印()で表して反応機構を説明する大学の考え方が必要です。
また、高分子化合物については、基本パーツ(単量体,モノマー)の名称や構造式を覚えること、それらがつくる巨大分子の立体構造に注意を払うこと、を意識するとよいでしょう。
天然有機化合物や高分子化合物は、高校化学では教科書の最後に出てきて、わけもわからず丸暗記となりがちです。ただ、生き物の体にも、私たちの身の回りにも、これらの物質はあふれています。それらの物質に対して「この物質はなんだっけ?」と思い浮かべてみると、実感をもって覚えていけるのではないかと思います。
また、生物選択者は、ほぼ唯一物理選択者に比べて多少楽できる分野かなと思っています。
(そもそも有機化合物の古い定義が「生命体から得られる物質」ですしね)
【高校生向け】大学入試に向けた化学の勉強法
大学入試に向けての化学の勉強は、
教科書や参考書等で内容の理解・暗記 ⇆ 問題集で演習
結局はこのサイクルをくり返す、ということに尽きると思います。
これらは独立しているわけでもなく、問題を解く中で理解が浅いと感じる(解けない基本問題がある)のであれば、参考書等に戻って内容の理解に努めるべきですし、問題を解く中で「ああ、こういうことだったんだ」と化学現象への理解が深まることもあるでしょう。
また、化学現象は理解していても、実際にそれを「問題が解ける」ことに落とし込めるかには多少のギャップがあるため、典型問題の解き方をマスターする、という意味でも問題演習は重要です。

大学入試では、「問題を解ける」必要がありますからね。
上記のサイクルをくり返すなかで、最終的に到達すべきは以下のレベルです。
- 典型的な問題とその解法をマスターする
- 高校レベルの化学現象を「自分の言葉」で説明できるようにする
もちろんそれぞれに「“マスター”の度合い」や「説明できる現象の深さ」には程度があるでしょうが、目指すべき方向は変わらないはずです。
典型的な問題とその解法をマスターする
多くの大学では、典型問題を落とさずしっかり取り切ることが大切になります。
- 教科書,資料集(図説)
- 講義型の参考書
- 基礎的な問題集
教科書は初見ではとっつきにくいかもしれませんが、なかなかいろいろと書いてあります。共通テストは、必要とされる知識は教科書レベルなのと、構成や内容も結構しっかりしているので、教科書を読むことには慣れておいた方が良いと思います。
資料集は複数社から出版されていますが、どこも大差はないです。豊富な図や写真は、特に無機化学などでは重宝しますし、理論や有機においても理解の助けになります。
ネット上にも動画や画像は数多いですが、資料集は分野や内容ごとに体系的にまとめられているため、化学を勉強するという点に関しては使いやすいと思っています。
おすすめの参考書や問題集はネットやYouTubeなどで山ほど紹介されているので、ここでは割愛します(丸投げで申し訳ありませんが…)。
志望先の過去問を直前までとっておく人もいますが、個人的にはとっとと確認して過去問研究をした方が良いと思っています。直前期の初見感も大事なんですが、やはり傾向をはやめに分析しておいた方が、その後の受験勉強の方向性が定まると思います。
高校レベルの化学現象を「自分の言葉」で説明できるようにする
特に難関大や難関学部を志望する場合は重要になります。
共通テストなんかもそうですが、「見たことある問題」や「知っている条件設定」は出題されなくなり、すべてが初見問題となります。
その場合に必要となるのは、「問題文や図表で与えられた設定や条件を、“既知の内容”と結びつけて解釈できるか」という能力です。
問題文や図表を正確に読み取る読解能力はもとより、何よりも「教科書レベルの化学現象をどれほど正確に理解できているか」が問われます。
問題演習を重ねる中で理解が深まることもありますが、最終的には化学現象一つ一つと向き合いじっくり理解に努める姿勢が必要です。
化学用語や式の定義、化学現象を捉える視点、反応の原理としくみ、歴史的背景や工業的背景など、自身の言葉で説明できるようにがんばりましょう。
予備校に通えるのであればそれも良いと思います。
ChatGPTやGeminiなどの生成AIサービスも、化学の勉強には大いに役立つと考えています。
ハルシネーション(嘘)には十分に気を付けなければなりませんが、質問の仕方や意図を明確にすると、高校化学レベルであればかなり納得のいく解説をもらえる印象です(私はGeminiのProモデルを愛用しています)。
何より良いのが、どこまでも気兼ねなく質問を重ねられる点です。テンポよく会話や質問を続けていくと、「さっき聞いた内容ど忘れしちゃった…」「頭が混乱してきた…」ということもあるのですが、何度同じことを聞いても、どんなに基礎的なことを尋ねても、嫌な顔をせずに対応を続けてくれます。現実ではネックになる時間や相手の都合を考慮する必要がないので、“疑問点をすぐに解消する”という習慣が身につきます。
おわりに
本記事を書くにあたり、記事中でも紹介した参考書や問題集をだいぶ参考にしています。
深く学ぶためには大学レベルの教科書や専門書も使っていくべきだと思いますが、今回は高校生をメインの読者と想定して書きました。
記事冒頭にも書いた通り、信頼できる指導者がいるのであれば、その方の下で指導を受けるのが上達までの一番の近道だと思いますが、ふとした時に「こんな見方もあるんだな」と思っていただけたら幸いです。
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